改行のルール
【文章を書くにいたって】
携帯が復旧し、インターネットを閲覧するのにパソコンではなく携帯を利用する人が増えているためか、最近ば場所によって文章の書き方にバラつきがあるように思えます。
主に情報交換を目的とした掲示板や、ブログなどでは「句読点を使わずに改行で読みやすさを表現する」文章も見かけます。確かに横幅が長い掲示板や携帯でインターネットを閲覧する場合には、句読点を使わず文章を小分けに改行してある文章の方が読みやすいかもしれません。
しかし、「小説を書く」場合には、「句読点」と「改行」を正しく使って文章を表現するのが最低限のルールです。
【改行のルール】
まずは、改行する時のルールについて軽く触れておこうと思います。
先に「句読点」の項目で文節と文末に句読点を置く事で文章を区切り、文章を読みやすくしたり、文章の内容を正しく伝えるなどといったことを書きましたが、改行するということは、「句読点よりも大きな区切り」である「段落」を作るということです。
まずは例文を読んでみて下さい。
《例文1》
あるところに、ケンカ番長と呼ばれ恐れられた少年がいた。彼の名前はマサル。肩に届きそうな長髪は動きやすいように後ろでまとめられ、首筋には金属プレートのペンダントが光っている。いつも身につけているそのドッグタグは、ファッション性を意識したアクセサリーではなく、父親から託された大切な「男の証」だ。三度の飯よりケンカが好きというマサルは、ある時アグモンと拳を交えたのをきっかけにパートナーとなり、DATSに入団。以来、人間世界で問題を起こすデジモンと戦う忙しい日々を送っている。
句読点を打っただけの「段落のない」文章を用意してみました。これだけだと読みにくく感じませんか?
今度は段落ごとに区切ってみます。
《例文2》
あるところに、ケンカ番長と呼ばれ恐れられた少年がいた。
彼の名前はマサル。肩に届きそうな長髪は動きやすいように後ろでまとめられ、首筋には金属プレートのペンダントが光っている。いつも身につけているそのドッグタグは、ファッション性を意識したアクセサリーではなく、父親から託された大切な「男の証」だ。
三度の飯よりケンカが好きというマサルは、ある時アグモンと拳を交えたのをきっかけにパートナーとなり、DATSに入団。以来、人間世界で問題を起こすデジモンと戦う刺激に満ちた日々を送っている。
今度はエンターキーを使って、段落だけをつけてみました。しかし改行をする時には、守らなくてはならないルールがあります。
それは、「文章の始めに1マス開けること」です。
例文3を見て下さい。
《例文3》
□あるところに、ケンカ番長と呼ばれ恐れられた少年がいた。
□彼の名前はマサル。肩に届きそうな長髪は動きやすいように後ろでまとめられ、首筋には金属プレートのペンダントが光っている。いつも身につけているそのドッグタグは、ファッション性を意識したアクセサリーではなく、父親から託された大切な「男の証」だ。
□三度の飯よりケンカが好きというマサルは、ある時アグモンと拳を交えたのをきっかけにパートナーとなり、DATSに入団。以来、人間世界で問題を起こすデジモンと戦う忙しい日々を送っている。
分りやすいように1マスを□で代用しましたが、実際には改行するごとにスペースキーを押して間をあければOKです。
ミスコピーや、携帯で作品を書いている人には文頭が詰まってしまっているのを見かけますが、本来はこうして「文頭は1マス開ける」のが正しい書き方です。
最後に、もう1つだけ。台詞の時に「」を使う時ですが、地の文と分けるために必ず改行しますよね? その時にもルールがあるので紹介します。
《例文4》
トーマは机に広げられた書類に目を通していた。一枚の紙にびっしりと細かな字が書きこまれたそれは、わずか19歳でノーベル医学賞を授与された天才の彼にとっても難解なのか、額には珍しく深い皺が刻まれている。
無意識にだろう。彼が疲労に乾いた目をこすったのを見て、かたわらに寄り添っていた影が声をかけた。
「少し休まれてはいかがですか、マスター」
「もう三時か。……分ったよ、お茶にしようか」
トーマの返事を聞いて、青い和犬のような獣型のデジモンはすぐに席を立つ。いつも忠順に付き添ってくれるガオモンは、トーマにとって誰よりも頼もしいパートナーだ。
このように、台詞の時に「」を使う場合には、始めに1マス開けることはありません。地の文と台詞とを分ける時に1行開けるか、改行するだけにするかは個人で差がありますが、本など「紙に書かれている小説は地の文と台詞の間をあけない」のに対して、WEBページなど「ネット上の小説は地の文と台詞の間を1行開ける」というのが一般的のようです。
どこで改行するかは、「どうすれば読みやすいか」を考えればいいとは言いましたが、読みやすさというのはどうしても書き手の感覚に頼らざるを得ません。
そのため、人によって改行するポイントは様々です。地の文の中の一文を目立たせるために改行する人もいれば、読みやすさを重視して意味のない改行を避ける人もいます。また、「間を作る」ために、五〜十行も改行してしまうという人もいます。
改行するのに「絶対のルール」はありません。これもまた、「読む」ことで経験値をあげたり、自分で研究することによって、「自分なりの適切な使い方」を身につけてみて下さい。
【改行のしかた】
「文章は段落ごとに改行しないと読みにくい」ことと、「文頭は1マス開ける」というルールは覚えていただけたでしょうか。次は、「改行するべき場所」について考えてみたいと思います。
例文を参考にしてみましょう。
《例文5》
あるところに、ケンカ番長と呼ばれ恐れられた少年がいた。
彼の名前はマサル。肩に届きそうな長髪は動きやすいように後ろでまとめられ、首筋には金属プレートのペンダントが光っている。いつも身につけているそのドッグタグは、ファッション性を意識したアクセサリーではなく、父親から託された大切な「男の証」だ。
三度の飯よりケンカが好きというマサルは、ある時アグモンと拳を交えたのをきっかけにパートナーとなり、DATSに入団。以来、人間世界で問題を起こすデジモンと戦う忙しい日々を送っている。
例文3とほぼ同じ。□を使わずに1マスあけただけの文章ですが、この例文の段落――文章が改行されるごとに、描写されている内容が違っているのは分りますか?
「彼の名前はマサル〜」から始まる二番目の段落では、マサルの髪型やペンダントなど、外見に関する描写をしています。次の段落「三度の飯より〜」の文章は、マサルとデジモンとの関係を説明する文なので、分けているのです。
こんな風に、段落を分ける・改行する場合は「描写する対象が変わる時」を意識してみるといいでしょう。例文でマサルの姿とデジモンの関係を同じ段落にしてしまうと、長くて読みにくくなってしまいますし、逆にマサルの姿を書く時に髪型とペンダントで段落を分けてしまうと、今度は短すぎてリズムが取れなくなってしまいます。
【まとめ】
段落をつける場合は、文章の頭――文頭を1マス開けましょう。
改行する――段落をつけることは、句読点よりも大きな区切りをつけることです。その区切りをつける時のポイントは、文章の中で説明している対象ごとに分けること。犬と猫のことを書くなら、犬のことを書く段落と猫のことを書く段落とに分けましょう。
改行は文末で区切るものです。小説を投稿する掲示板などは、読みやすい文字数で折り返すような横幅に設定されているので、無暗に改行するのは避けるべき。同じものを描写している文章は、改行せずに書きった方が読みやすくなります。
句読点と同様、大きな区切りをどこでつけたらいいか? という見極めは、より多くの本に触れることで上達することができます。
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